「シンガポールで妊娠、出産#2〜キャリアとの天秤〜」
妊娠前はどんだけ前しか見えてなかったんだ!!という、夢に向かってまっしぐら、まさに猪突猛進だった過去の私。
やっとの思いで掴んだ学生時代からの夢、海外ホテルでの仕事。
どんなにどんなに辛い事があっても、10年間「仕事を辞める」という選択は一瞬たりとも頭をよぎったことはありませんでした。
それほど仕事を200%楽しんでいたし、天職だと信じていました。
大好きな仕事を辞めると決めた日。
今までの働き方から、仕事内容を変えようと決めた日。
心の葛藤と戦い、決断した日。
みなさんにもそんな日があったのではないでしょうか。
これからそんな決断の日を迎えるかもしれない方、現在進行形で悩んでいる方へ。
「こんなに大好きな仕事を辞めてもいつかは何とかなるんだ、大丈夫!!」
そんな風に私のブログから少しでも前向きな気持ちになってもらえたら嬉しいです。
正直ここまで書く必要もないのでは、とかなり葛藤もしました。
ですが当時の私も似たような境遇の方に出会ってどんなに救われたことかと思い出し、その方への恩返しの気持ちで包み隠さず書くことにしました。
「ショック!!人生初入院」
前回のブログで書きましたが、私は成人女性の4人に1人は見つかるという子宮筋腫を抱えていました。
見つかった当時は1センチにも満たないサイズで、要観察レベル。特に問題なく数年が経ち、結婚。その半年後位からだんだん生活に支障が出てくる大きさになっていました。
ある日の定期検診でシンガポールの担当医からの一言。
「こんなに大きくなって、月経過多、貧血も酷いしそろそろ手術をして筋腫を取ることも視野に入れていきましょう。」
“ついに手術かぁ、、、”
今まで入院すらしたことなかった私が、「手術で筋腫を取る選択」という現実と向き合う日が始まりました。
とにかく子宮筋腫の手術のメリット、デメリット、手術方法など情報を集めるも、「どうしよう、どうしよう。」とここに来ても手術をするのかどうか悩んでは仕事に追われる日々を過ごしていました。
そして次の検診での一言。
「あなた貧血でこのまま家に帰る途中で倒れてもおかしくないわよ!!
今すぐ入院して輸血治療しましょう!」
“えぇぇぇぇぇぇぇ!!!ゆ、輸血〜〜!!??”
なかば強制的な説得を受け、急遽休みを取り、人生初輸血&初入院。
一時的に貧血は回復しましたが、この人生初入院は結構ショックで本当に自分の身体と向き合う時が来たのだと悟りました。
<貧血の治療には、鉄分タブレットや鉄分シロップを摂取する方法があります。私の場合は鉄分タブレット摂取では効果が見られず、鉄分シロップ摂取を通り越して最終手段の輸血治療になりました。>
「妊娠できる可能性が通常の半分の確率しかなかった!」
その後日本の病院でも筋腫を検査。
手術をするにしてもしなくても、今の状態を知るのに精密検査をしておきましょうとMRI検査をしました。
それまでエコーで見ても筋腫の大きさにいまいちピンときていなかったのですが。
MRI写真で自分の筋腫と子宮を見たとき、素人でも異常な状態がはっきりわかりました。
絶句
言葉にならない
何これ、ボコボコ
涙が溢れてくる
「この先妊娠を考えているなら、子宮を残して手術はできます。
でも手術後に必ず妊娠できるとは限りません。術後の癒着が起こる可能性があります。あなたの場合は手術をしてもしなくても、妊娠できる確率は健康な方の半分と考えていてください。
もし筋腫を抱えたままで自然妊娠を望んでいるなら、規則正しい生活が不可欠です。でもあなたの場合は、自然妊娠できてもかなりの確率で流産しやすいので人一倍気をつけるように。
でもこの大きさだと自然妊娠はかなり難しいですけどね。」
一人病院の中庭で号泣しました。
“あんな酷い子宮でどうやって赤ちゃんを育てれるの、、、。
妊娠は無理なんだ。
妊娠しても流産しちゃうって。
私、ママになれないんだ、、、。”
妊娠できる可能性がゼロとも絶対流産するとも言われてはいなかったものの、その時の私はショックが大きすぎて全く前向きに考えられず、ただただ泣くばかりでした。
「もう限界かもしれない」
そうは言っても、泣いてばかりでは何も変わらない。
私は当時ゲストリレーションズとして、宿泊ゲストの対応を主に担当していました。上司に相談し、シフト勤務ではなく規則正しい勤務時間に変えてもらいましたが、仕事大好きで、責任感200%の私に、18時でキッチリ仕事終えて帰れる訳なく。
結局今までと同じか、それ以上に働いてしまい周りに心配だけかける日々。
そんな間にも筋腫の悪さでどんどん生活に支障が出てきており、仕事中は持ちこたえていたのに、ついには心までがポキっと折れてしまいました。よりにもよって、ホテルゲストの問題対応している時に。
お叱りを受けていたゲストの前で涙が勝手にポロポロ。
当然ゲストはさらに激怒。「泣かれたってこっちが困るんだ!!」
ごもっともです。
すぐに気を取り戻し対応を続けましたが、
プロフェッショナルとしてありえない自分の姿に何か限界を感じ始めました。
そして追い打ちをかけるように、私の接客に対しての不満のクレームも発生。
“果たしてこのままの状態で仕事を続けていっていいものか。”
今まで一度も頭をよぎったことはなかった選択肢がまさに、ぽわ〜んとどこからか湧いてきたのです。
自分でも驚きでした。
自分の気持ちなのに他人事のような、変な感覚でした。
それから自分の人生において何を優先にするべきか立ち止まって本気で考え始めました。
「キャリアとの天秤」
まずホテル内でデスクワークのできる部署に異動することを考えました。
でも想像しただけで、無理だった。
リピーターゲストが来たら結局表に出て対応してしまう自分が安易に想像できたし、それではきっとシフト勤務をやめた時と同じ。
ホテリエでいる間は、最後まで直接ゲストと関わる表舞台のプロフェッショナルでありたい。
そんな仕事への“こだわり”が当時の私を頑固にしていました。
でもゲストリレーションズとして働き続けるということは、自然妊娠できても他からは妊娠が分かりにくく一番流産の確率が高いという妊娠初期、ましてや私は人一倍流産の確率が高いという時期にもゲストの重たい荷物を運んだり、館内を駆け回るようなことを続けるということ。
本当に流産してしまったらきっと自分の選択を一生悔やむだろう。もしかしたらその環境も恨んでしまうかもしれない。かといって、妊娠したらすぐに仕事を辞めるという無責任な選択もしたくない。
そして行き着いた猪突猛進な私の答え。
未来のベビーに会う為の健康な身体作りに専念する!
きっぱりと仕事を辞めることにしました。
仕事を辞めたからって妊娠できるという保証もないけれど、今のままでは後悔する。
仕事にはまた戻れる。
心が決まりました。
そして仕事を辞め全てをリセットしたある日。奇跡が起きたのです!!
私のボッコボコな子宮のここしかない!!という絶妙な所に受精卵だった長男がしがみついてくれて、晴れてママになることができました。