はたママインタビューでは、シンガポールで様々な形で働くママをご紹介します。記念すべき1人目は、「はたらくママ@シンガポール」の産みの親である、まっきーこと小野麻紀子さんにお話をうかがいました。パートタイムで働きながら、20名以上のボランティアスタッフと一緒にコミュニティの運営をするパワフルな彼女。
はたママのイメージの基にもなった(?)彼女の原体験について、また子育てについて大切にしていることについてお話してもらいました。
仕事と育児だけでなく、自分の居場所って、いくつあってもいいんじゃないかな。
もともと「シェアする」という考え方が好きでした。シンガポールに来る前、社会人4年目のことですが、ひょんなことから大きな日本家屋で仲間8人で共同生活をすることになったんです。現在のようにシェアハウスがはやる前のことです。“都会でできる田舎暮らし”をテーマに、自分たちで鶏を飼い、野菜は農家さんから直接買い付けて、みんなで自炊する生活をしていました。
そうすると、そういう生活に興味をもった友だちや、そのまた友達が次々と集まってくるんですよね。いろんな背景をもった人たちがひとつの家で食事をしながらいろんなことを話せる場が生まれた。
だれかが何かをやりたいって話すと「じゃあ、知り合いにこんな人がいるから紹介するよ」って、話がどんどん化学反応を起こしていく。そうして人のつながりが広がって、新しいものが生まれていくのがすごく楽しかった。
今思えば「はたらくママ」もこの時と同じような場を作りたくて立ち上げたのかもしれません。同じ日本人でもそれぞれが違う背景、状況で暮らしていて情報が集まりにくい海外。だからこそ、たくさんの人がつながっていろんな経験、知識をシェアして楽しめたり、助け合えたらいいなって。
私、自分の居場所はいくつあってもいいと思うんです。仕事、家庭、その枠だけにおさまらなくても、やりたいことがあればやったらいいと思う。「はらたくママ」はいろんなママたちそれぞれが、仕事や家庭では出来ないことを試してみたり、興味あることに出会えたり、会いたい人に出会えたりするそのきっかけの「場」になったらなと思っています。
子育てで大切にしていることは、自分が、まず毎日を楽しんでいる状態をつくることです。自分が充実していれば、こどももその背中を見ていてくれるかな~と思って。(笑)逆にやりたいことがあるのに、我慢ばかりしているとどうしてもいらいらしてしまうし、子どもや夫にも優しくなれない。何か問題を感じたら、夫婦でよく話し合うことが必要だと思うんです。
時には働くスタイル変えたり、子育てを手伝ってくれる人を探したりして、家族それぞれが充実した毎日でいられるよう、解決策を探していく。私たちの場合も、仕事をしている間、子どもを見てもらうことが不可欠でしたから、夫婦で話し合い、一人目のときはナニーさん(シンガポール人で個人的に自宅で預かるスタイル/写真:ナニーさんと娘さん、私の娘)を探し、二人目の出産後は住み込みメイドさんを迎えました。
仕事も最初はフルタイムで働いていたけど、その後は時短にさせてもらっていたり。今はパートタイムで働いています。そうやってその時々の自分たちの生活を見つめて、それにあわせた環境作りをしています。
とはいえ、4年前、子供との時間を十分とれない日が続いたとき、これで本当にいいのかなって、何度も悩みました。小さすぎる娘を抱きながら、この子は私をお母さんって認識してくれるようになるのかなって、不安になって泣いたことも。そんな時ある本に救われました。「幸せになる脳はだっこで育つ」(山口 創著)という本です。
こどもに愛情を伝えるには、肌と肌のふれあいがとても大切だということを知りました。働いているママに向けた具体的なメッセージもあって、本当に安心したのを覚えています。それからは抱っこしたり、手をにぎったり、なるべく肌が触れ合う状態をつくって、短くても密度の濃い時間を意識するようになりました。
上の娘が4歳になった今、寝る前の「ママ、今日もありがと。ママ、だーいすきっ!」って言ってくれる時間が私のハッピータイム。娘のそのまっすぐな言葉がとっても嬉しい。今の自分を娘たちもちゃんと見てくれているんだと信じて、これからもがんばりたいなって思っています。
小野 麻紀子(1982年生まれ、WEBメディア企業パート勤務)
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2010年12月、シンガポールに転職した夫と暮らすために来星。英語力が十分でないものの就職活動をスタート。しかし限定された職種にしかつけず、壁にぶつかった。その後様々な道を模索しながら人材紹介会社で4年勤務し、その後、現職。妊娠当初は、出産前後に必要な情報(出産費用、病院、預け先等)を身近に聞ける人がおらず、自らの足で情報収集に奔走したという。このときに得た経験や知識を多くの人の役立てたいと2013年「はたらくママ@シンガポール」を設立。現在、2児の母として、子育て・仕事・コミュニティの運営と精力的に活動している。
ライター: 粟飯原もとめ