インタビュー

「はたらくママ@シンガポール」ってどんな集まり? はたママ・ボランティアスタッフ体験談 Profile #3栗山 美沙さん

「はたママ・ボランティアスタッフ体験談」では、本帰国を迎えたメンバー3人にボランティアスタッフとしての活動を振り返り、語っていただきました。

「そもそも、はたママってどんな集まりなの?」「スタッフはどんなことをしているの?」「はたママに参加して何が良かった?」など、率直にお伝えします。

はたママでは、いっしょに活動を盛り上げてくれるスタッフ仲間を募集中です。スタッフ活動に興味がある方は、ぜひお問い合わせフォームからご連絡ください。もちろん、スタッフではなく一参加者として、はたママのイベントに参加したいという方も大歓迎です!

スタッフ体験談の第3回目は、イベント企画等を担当された栗山 美沙さんです。

下段が栗山美沙さん

胸にモヤモヤを抱えていたシンガポール生活初期

来星して最初の二年間、私はずっと胸にモヤモヤを抱えていました。日本で積み上げてきたキャリアを捨てることに寂しさはあったけれど、「家族が揃って過ごせることが一番。シンガポールでなら働けるし、自分らしく楽しめる。むしろ日本ではできない経験をしたい。」と前向きな気持ちで臨んだ渡星。でも、現実は大きく異なるものでした。頼れる人のいない初めての土地で、初めての育児。夫の会社規定等で働くことが難しい上に、常に子どもと一緒の生活で行動は制限だらけ。一番大切に思っていた家族の時間も、夫が多忙で十分に取れず、むしろワンオペ状態。

「仕事を辞めて、家族や友人と離れて、私は何のためにシンガポールまで来たんだろう。」という気持ちが膨らんでいきました。

初のイベント参加は、なんとパパ

そうこうしているうちに二人目を妊娠。つわりがひどくて外出できない自分に代わって、夫に上の子を外に遊びに連れて行ってあげて欲しいと思うものの、夫は子供と二人で出かけたことが無く、慣れていないという状況でした。そこで目に留まったのが、当時はたママが企画していたイベント「森のお散歩」。他のママもいるイベントならば、困ったときには誰かが助けてくれるのではないか、との期待をもって、パパに子連れでイベントに参加してもらいました。

実際、他の参加者の方がとても親切にしてくださり、とっても楽しんで帰ってきました。それをきっかけに夫は子供との外出に自信を持つようになり、子どもも夫になつくようになりました。はたママには感謝しています。

「何ができるかわからないけれど、何かしたいです」とスタッフに応募

その後、体調が落ち着き、自分もはたママイベントに参加するようになりました。印象に残っているのは、メイドさん向けに和食料理教室を始めた方のお話を聞くイベント。講師の方は、「何か物足りない、何かやりたい」というモヤモヤした気持ちに向き合った結果、料理教室を始めたとのことで、自分と似た想いを持っている方の話はとても響きました。

このような催しを企画運営しているスタッフメンバーにも惹かれ、気が付いたら「何ができるかわからないけれど、何かしたいです」とスタッフに応募していました。相談の結果、「プレはたママチーム」と「ウェルカムチーム」を兼務。

「プレはたママ」というのは、今はまだ働いていない子育て中のママのことで、子連れで遊ぶイベント等を企画します。ウェルカムチームは、はたママ参加希望者とFacebook上で最初のやり取りをするチーム。はたママがどんな集まりなのか知らない、友達も一人もいない、という中、おそるおそる連絡をくれる参加希望の方もいます。適宜、情報を提供したり、共通点を探して会話をする等を通じて、少しでも親しみを持ってもらえれば、と思いながら、担当していました。

日本の児童館みたいなところを作りたい

当初は、環境のせい、子どものせいにして、出来ない事ばかりを数えていた私。でもある時、いつも楽しそうに、何にでも積極的な娘を見て「だけど、私は今不幸じゃないよね、幸せだよね。家族優先に子どもと向き合ってきた時間、無駄じゃなかったよね」と思えたんです。

一生懸命子どもと向き合ってきた『今』の自分だからこそできることが何かあるはず。手に入れられないものを数えるのは辞めて、今できること、自分の周りにあるものを大切にしよう、と『今の自分』を受け入れることができました。

じゃあ、今の私には何があるだろう?

そう考えた時に出てきた答えが「英語がすき」「子どもがすき」という気持ちでした。日本の児童館のように親子が集まって一緒に遊んだり、育児の悩み喜びをシェアできる場所を英語を使って作りたい。

子育てに悩み、時に孤独になりがちな頑張り屋のママたちが、楽しくリフレッシュして笑顔になれる場所。子どもたちが、大好きな両親と一緒に楽しい!自分は愛されている!と感じられる幸せな時間を過ごせる場所。そんな場所です。

スタッフ仲間に話したところ、「プレはたママのイベントとして、やろうよ!」と背中を押してくれ、なんと、相談した二週間後には日本語と英語の手遊び教室として実現しました。

「こんな企画どう思う?」と聞くと、たいてい「楽しそう!手伝うよ」と挑戦を後押ししてくれる、一人では心細くて大変なチャレンジも仲間がいるから楽しくできる。そんな集まりが、私にとってのはたママでした。

それ以来、何回か手遊び教室を開催しているうちに、その噂が広がり、驚いたことにローカル幼稚園から仕事のオファーを受けるようになりました。それも一か所からではなく、複数から。日本語クラスの先生として働くことになり、一度は諦めた「働きたい」という想いがついに叶いました。

企画したベビーイベントの様子

背負いすぎて苦しくなったときも

自分の子供が幼稚園に通いだし、はたママの子連れイベントに、私はスタッフとして子供なしで参加するようなことが何回か続いた頃、以前ほど純粋に楽しめていない自分に気づきました。自分が楽しいと思う事、やりたい事をそのままイベントにする、という気持ちを忘れていたことに気づき、新しいメンバーに引き継いで、私はスタッフから抜けることにしました。けれども、そのことを責める人はもちろん誰一人としていなかったですし、その後もスタッフ仲間との親しい関係性は何も変わっていません。

はたママスタッフをするにあたってのモチベーションや置かれた環境は人それぞれ。自分の心地よいペースでやれば良いし、それでも無理だと思えば卒業すれば良い。そんな集まりなので、もしスタッフ活動に興味のある方がいるならば、「少しでも気になら、ぜひやってみたら」と伝えたいです。

仲間と泣きながら話して、モヤモヤが晴れていく

はたママスタッフ同士で語り合う中で、感情がこみ上げてきて泣けてくることがたくさんありました。辛いことも、楽しいことも、モヤモヤした気持ちも色々なことを語り合いました。共感しながら話を聞いてもらったり、時には相手の気持ちを聞く中で自分と重なる部分を見つけて自分の気持ちまで整理できたり。自分は何にモヤモヤしているのか、本当は何を求めているのか、そんなことを考えていました。

世の中とつながりたい、どこかに所属していたいという気持ちに気づき、では働きたいのか、ボランティア等の他の形でも良いのか、仲間と話す中で絡まった紐がすっと解けていくのを感じました。

モヤモヤを消化できないまま無理やり前に進んでも、モヤモヤは残ったままになってしまっていたと思います。私にとって、家庭でも職場でもないけれど、自分を表現できる第三の場所がはたママでした。はたママが無かったら、私のシンガポール生活は全然違うものになっていたと思うと、はたママには感謝しかないです。

Profile
栗山 美沙
在星歴:6年
ボランティア所属:プレはたママチーム、ウェルカムチーム
家族構成:夫、長女(6歳)、次女(3歳)

Interview and Written by Kaori Horita

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