インタビュー

自分と両想いになると周りを大切にできるーーはたママ・インタビュー Profile 010: 徳沢 理絵

はたママインタビュー10人目は、今年からはたママ代表となった徳沢理絵さん。

周囲の人から女神!と言われるくらい優しいオーラと、強い芯を持った理絵さん。
3年前にシンガポールに来てすぐにはたママに参加、多くのイベントをサポートし、あっという間にグループの中心的存在に。
仕事と育児という切り口でインタビューをする中で、理絵さんが根底に持っている素晴らしい価値観にたっぷり触れることができました。

 

大好きな仕事。多忙な日々。気づいたのは自分の思い込みで人を判断しない大切さ。

 

日本では、ずっと「食」にまつわる仕事に就いていました。最初はグルメガイドブックの企画製作会社で、取材・撮影・ライター・企画営業を中心に何でもやっていました。

私はもともと食にとても関心があり、シェフの方々のお話や、食材の話を聞くのが大好き。基本的に人と話すのが好きで、新しいものに遭遇するとワクワクする性格なので、飛び込み営業も全く苦ではありませんでした。

むしろ楽しい気持ちが優っていたほど。20代でブランドマネージャーを任せて頂いたのですが、出張時は一人でも多くの方と会いたくて、アポイントを入れ過ぎてしまって。都会のど真ん中を、パンプスを脱いでスーツに裸足で走っていたほどでした(笑)。

おかげさまで営業成績も好調でしたが、一方で、細かい入力作業や事務はどうしても苦手分野。自分が苦手で嫌なことは他の人も嫌なんだとずっと思い込んでいました。ある時、入力や編集は好きだけど営業が苦手な人とチームを組むことに。

すると、お互い得意分野だけに集中することができ、今までよりずっと楽に、良いパフォーマンスをあげることができたのです。

自分が嫌なことは、他人もきっとそうだと思いがちで、だから人にお願いするのを躊躇してしまったり。でも自分が苦手なものの中に、他の人の「喜び」や「夢」があるかもしれない。

これは自分にとって大きな発見となり、何事においても自分の価値観や思い込みで、勝手に人の気持ちを判断しない大切さを学びました。それからは周りの人に、好きな事、得意な事、苦手な事、やってみたい事を、普段から意識して聞くようになりました。

 

 

2人の女の子を出産。子供からもらった大切なギフト。

 

結婚後は、「みんなの暮らしをもっと楽しく、わくわく、心地よく」をコンセプトに、食やライフスタイルに関するメディアを作っている会社に10年ほど在籍し、Webの広告営業からイベントディレクターなどを経験させてもらいました。

長女の出産を経て復帰後は、以前のように自分の好きなように時間を使えず、思うような成果をあげられない自分が情けなくて、申し訳なくて、夜中に泣きながら仕事をしていた日もありました。
実は姉が立ち上げた会社でもあったので、求められる以上により良い成果を返したい、他の人に迷惑をかけたくないという気持ちが強かったんです。

 

ただ、経営者である姉自身は、一緒に仕事をしている人の良いところ、どうやったらその人が得意な事で輝けるかをいつも探す人。私が出産により環境が変わった時も、「今」できることで、得意なことを活かすにはどう変化すればいいかを考えてくれました。至らないところだらけだった私に、出来る範囲の最大限、得意分野で仕事をさせてくれた会社のメンバーには本当に感謝の気持ちでいっぱいで、いつか恩返ししたいと思っています。

 

そして次女の出産。自分の価値観がとても大きく変わるきっかけとなった、大切な転機のひとつです。彼女は生まれたとき、心臓に穴が3つ空いていて、他の多くの臓器にも問題がありました。

3つの大きな病院で13科目ほど受診していたので、毎日が病院のはしご。24時間、20分おきにケアが必要でほとんど睡眠をとれない時期もありました。座る、立つ、など単純な動作も理学療法に通い、言葉などを含めた知的な成長過程での発達も順調とは言えませんでした。

 

special needsだったからこそ、得られた気づきが宝物になった。

 

次女の子育は大変なことも多かった分、自分の中にブレない軸をつくるキッカケをたくさんもらいました。
1つめは、本人の喜びと成長にのみフォーカスするぞ、という覚悟を決められたこと。

当時は身近な人達からも世間の基準と比べられて、「この歳でこれが出来ないなんておかしい、恥ずかしい」「いつになったら喋れるの?」「もっとしっかり指導してくれる所に連れていきなさい」と厳しくアドバイスされることもありました。でも場所見知りが激しく、初めての人を怖がって泣きじゃくる娘には地獄のような時間。

私は、もしかしたらこの先長く生きられるかわからない次女に、まだおこっていない「未来」の心配や、人にどう思われるかで、「今」この生きている時間を、ただ辛いだけの時間にはしたくなかった。今日を元気に生きているだけで幸せ。次女が心地よいこと・喜ぶこと・興味をもって夢中になれる環境を用意する事に集中しよう。

少しずつでも、日々成長していることを喜ぼう。と、腹の底から覚悟を決めました。できないことにフォーカスすると、子供は縮こまってしまいます。ゆっくりと、少しずつ成長しているなかで、 得意なこと、好きなことに目を向けて思い切り伸ばしてあげたい。できない部分はそれにつられて、きっと自然と伸びていくだろうと思ったのです。

2つめは、生きていることはそれだけで奇跡であり、喜びなんだ、と気づかせてくれたこと。

身体のトラブルが多かったので、歩く、食べる、といった私にとっては単純な動作も、何億という奇跡のような身体のシステムの精密な連鎖のうえに成り立っているんだ!と驚きました。今まで当たり前だと思っていたことは、全然当たり前ではなかった。

このことを忘れたくなくて、毎日20個、「当たり前だと思っているけど、実はすごく有り難いこと」をノートに書き出した時期も。これは半年以上続けました。

目が見えることも、耳が聴こえることも、言葉を話せることも当たり前じゃない。「じゃあ、自分がこの目で、本当に見たいものは何だろう?」「どんな言葉を話したいだろう?」と真剣に考えるきっかけになりました。

足りないものを不満に思うのではなくて、既に与えられている沢山のものに目を向けよう、そんな風に思えるようになったことが、本当に素晴らしいギフトだったので、一見悲しい、辛いことでも、すべては良い事に繋がっているんだなぁ、と心から思います。

3つめは、変な言い方かもしれませんが、素直に助けてもらうことが出来るようになったこと。

「もう、どうにもならない」となるまで、つい自分で出来ることは自分で、と頑張ってしまう性格だったのが、そうなる前に素直に人に甘えることで、世界がとても広がりました。
療育の先生に「障がいを持つ子どもの親御さんで働いている方はまだ珍しいんです。

私たちは親御さんも自分の人生を生きて欲しいと思っているので、お母さんのこと、応援しています!」と言われたことがあります。世間では、「障がいがある子どもを人に任せるなんて」という声もあるそうです。

保育園に預けて復帰するか悩んだ時に、背中を押してくれたのは療育の先生、友人たちでした。
「絶対に子どもの成長になるから!」と。本当に、その言葉の通りでした。

成長がゆっくりなお子さんを持つお母さんは、自分がやりたいことを我慢して日々を過ごしている人もたくさんいると思います。でも、思い切って自分の気持ちを伝えてみると、応援してくれる人たちは、きっとすぐそばにいると思います。

 

 

自分と両想いになれば、周囲の人を大切にすることができる。

 

育児をめぐっては夫にモヤモヤする場面も実はたくさんありました。今では、夫は何でもやってくれるスーパーパパですが、以前は自分の趣味を優先することが多々あり、夫を責めていたことも。

でもあるとき、「お願いしても夫がやってくれないから私がやらないといけない」「夫が好きにしているから自分が我慢しないといけない」と人のせいにしていたけど、いやいや、私自身が自分に我慢をさせているんだ、そして、その選択をしているのは他の誰でもない自分なんだ、という事に気づいたのです。

そして『自分のことより子どもを優先させるのが当たり前』と当然のように思っている自分にも気づきました。私の心の奥底の本音は、夫のように私も好きなときに好きなことをしたい、と思っていたんですね。

夫に対して怒っているようで、実は、自分が自分の心を置き去りにして進もうとするから、このモヤモヤがおこっているんだ。そう気づいたとき、自分の本当の思いや願いをしっかり「みる」、しっかり「とりだす」、自分が無意識のときに何を考えて、どんな独り言を頭の中で話しているか、そこにものすごく注意深く意識を向けるようになりました。

自分のエキスパートになろう、自分と両想いになるぞ、と心を決めたんですね。毎瞬毎瞬、自分と対話し、どんな自分の気持ちもそのまま素直に認め、最大限に自分の望みを叶えていく。そうして自分自身と仲良くなると、人のせいにする必要がなくなって、自然と相手にも感謝できるようになりました。

すると夫の行動にも変化が。私が自分自身を最大限にサポートしていたら、いつのまにか夫がそれ以上に私をサポートしてくれるようになっていたのです。自分を大切にする、というと、一見、自己中心的なことのように思えますが、最小単位の半径30cmの中にいる自分を大切にして整えてから、すぐそばにいる人、半径1m、5m、と距離を伸ばしていく。結局は周囲の人を大切にすることに繋がるんだと思います。

 

 

実は来星時から、この「自分と両想い」になる、という話をしていたのですが、去年実現したイスラエルの旅をきっかけに、「自分と両想いお茶会」という名前で、お友達に伝える集まりを始めました。お茶会の案内を出したら100人以上の方から参加したいという声を頂き、参加して実践してくれた方から良い変化のフィードバックを貰えるのが本当に嬉しくてありがたくて。恥ずかしいけど一人で感動して、嬉し泣きしています。

少人数のお茶会では、自分の心の潜り方、自分との対話の方法、感情のもつ力やその本質、どのようにその流れに乗るか、などを話したりしています。短い時間で説明するのは難しいのですが・・・。たとえば、怒りを感じたり、嫌な思いをした時。

その出来事を解決しようとしたり、自分の方が正しいと相手に認めさせようとしたりするけれど、それは一旦横に置いておいて、その感情がどうしておこるのか?を探っていくと、自分の中の「これが正しい」という決めつけだったり、「こうするべき」という思い込みが原因だったりします。

でもその信念って「今」の自分の幸せのために必要なこと?と自分に問うと、そうではなかったり。
自分を縛っている思い込みから解放されると、自分がずっと楽になります。

ただ、ネガティブな感情も排除せず、しっかり落ち込んで、味わうようにしています。親しい友人に話して共感してもらうと気持ちが軽くなるように、同じ作業を自分の中で自分自身とやる感じです。嫌だな、と思う気持ちの反対にある、じゃあ本当はどうしたいのか、どうありたいのか、自分の心の奥底の本当の望みや愛に気づくきっかけになるし、そっちにフォーカスできるようになります。

日々、一番大切にしているのは、自分を気分の良い状態にしておくこと。
何をするのが楽しくて、ワクワクして興奮するのか、どうしたらホッとして心地いいのか、常に「今」の自分に聴くようにしています。

 

 

ワクワクから始まったシンガポール生活とはたママのこと。メンバーへのメッセージ。

 

2016年、シンガポールに移ることが決まった時は、嬉しい気持ちが強くて、新しい場所に住むのにワクワクしました。
たくさんの人と出会いましたが、みんな「すごいなぁ!!」と感動することばかりで、好きな人ばかりです。 まっすぐに、自分に正直に生きている素敵な人が多いと思います。

去年、前はたママ代表のまっきー(小野麻紀子さん)から、代表を引き継いで欲しいと相談された時はあまりにも予想外で驚きました。私にちゃんとできるかな、迷惑をかけるかもしれない、などと不安で一週間悩みました。

でも、はたママを通じての人との出会いが、自分の大切な宝物になったこと、この場を失くしたくないという強い気持ち、まっきーの次のチャレンジを心から応援したい、との思いから代表を引き受ける決心をしました。サポートスタッフの皆さんがものすごく優秀で、愛にあふれているので心強く、昔から続く大切なコンセプト「無理なく、楽しく!」でやっていこう、と。

普段の私は、エピソードを挙げると驚かれるほど、抜けているところがたくさんあります。大切な日にちを間違えたり、物を忘れたり。私を知っている人は大きくうなずいているはず・・・。でも、だからこそ、みなさんが気楽に参加してもらえる空気を作れるかもしれない、といい方向にとらえています。

シンガポールはDP(帯同ビザ)で働くこともできますし、住み込みヘルパーさんをお願いする選択肢もあります。勤務形態も多種多様な働き方ができるので、子育てしながら働きやすい、ありがたい環境だと思います。

オープンマインドな人が多く、人と人のつながりも多いので、まずは自分がどういう働き方がしたいのか、自分のやりたいことは何なのか、自分の本音をしっかり聴いて、それを周りに伝えるようにしていると、ひょんなことから道が開けると思います。

はたママは今後も出会いの場、シェアの場であり続けたいと思っています。不安になるのは「知らない」から。いろいろな情報をシェアすることで、シンガポールに来た皆さんの育児、海外生活、キャリアなどの不安を解決することができたら。

そして、チャレンジを応援する場でもありたいです。はたママには誰かのチャレンジを積極的にサポートする素敵な人たちがたくさんいるので、まずはトライする場として活用して欲しいし、私も一緒に楽しみたいです。

はたママメンバーのみなさん、期間限定でも単発でもいいので、何かやりたいことがあれば、気負わずに一緒にやってみましょう。不安や心配があっても、助けてくれる人が沢山います。一歩踏み出せず遠慮している人がいれば、気軽にメッセージや相談をしてくださいね。

 

Profile:
徳沢 理絵  とくざわ りえ

在星歴3年。医療系企業で時短勤務(帯同ビザ)
夫、長女(10歳)、次女(8歳)の4人暮らし

好きな場所、好きなもの:イーストコーストパーク、お散歩、旅行、読書、映画鑑賞、料理、美味しいものを食べること!
好きな言葉:自分と調和し、世界と調和する。目の前にいる人を大切にする。今を最大限に味わう。
一日の過ごし方:4:30〜5時起床。子供のお弁当と朝ごはんを作り、スクールバスに送ったあと出社。
退社後、子どものピックアップ、宿題や工作を一緒にやったり、掃除・洗濯・夕食作りをして散歩。
子供が就寝後に読書などの自分時間を楽しんで23時ごろ就寝。

 

Photo by Lisa Morikawa
Interviewer and written by Noriko Fujii
Cooperated by Naomi Tanno

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