前回に引き続き、シンガポールのワーママに「仕事と家庭」の両立について生の声をうかがってきました。
シンガポールは、共働きが当たり前のように思えます。出不精で貧しい特派員でも、たまにではありますが平日の昼間子どもを連れてプレイグラウンドに行くことがあります。
午前中は、ほとんど誰もおらず貸し切り状態。ヘルパー(メイド)さん連れか、ごくたまにシンガポール人のママを見かける程度。やはり、共働きが常識なことは実体験からも感じるところがあります。
さて、今回はリクルーティングの仕事の最前線で Directorとして働かれているMelindaさんに、仕事と家庭の両立について考え方を聞いてきました!
みなさんの少しでもヒントになりますように…。
仕事と家庭の両立とは?!
特:まず、簡単なバックグラウンドを教えてください。お子さんの人数と年齢など。
M:私には17歳と13歳になる娘がいます。
特:え!!そんなに大きなお子さんがいるようには見えません!
M:(笑)弁護士のヘッドハンティングの仕事をかれこれ20年近くしています。この会社に入ったのは約2年くらい前ですかね。家庭では思春期の子どもに向き合いながら、仕事しています。
特:同じ分野での仕事を続けてこられた。
M:そうですね。学生時代は会計の勉強をしていたのですが。卒業後に就職相談をした際に、リクルーターに向いているとのことで、この業界に入りました。
特:なるほど。ずっと同じ業界で働き続けて来れられたんですね。ずっと、フルタイムでの仕事。難しいと感じたことはなかったのですか?
M:シンガポールは幸いとても小さい国家です。私たちの両親も近くにいます。30~40分くらいの距離です。日本の東京と大阪ほどは離れていませんよね(笑)。なので、両親の援助を得やすいですよ。
特:では、お子さんが小さいときはご両親が面倒を見られたんですね。
M:そうですね。私の場合は、自分の母親に面倒を見ることをお願いしました。また、母親からも私が専業主婦ではなく働くことを勧められました。経済的理由もありますが、社会的接点を持つことが大切であると。
特:そうなんですね。なんて先進的なお母さま。
M:我々の世代の女性の多くは高等教育を受けていて働くことが当然。逆に、母親の世代は子育てをメインにしていました。政府が、女性の進出を後押ししている時代でもありますが、私たちの世代で働くことは当たり前のことと思っていました。
M:加えて、国内ではヘルパー(メイド)さんの雇用が政策的に展開されていましたし、たくさんの助けがあったことが、仕事をフルタイムで続けられた秘訣です。保育園も7時から19時までですし、そうした周囲のサポートを最大に活用できる状況にありました。
特:やはり、たくさんの人のサポートが必要なんですね…。
M:私の夫も大変協力的です。実は、夫は月の半分は出張でいません。よく東京にもいくんですよ!でも、出張先からもスカイプで連絡しあったり、育児教育へのコミットを積極的にしています。
特:素敵な旦那さんですね!
M:そうですね(笑)。私は2人目の子どもができてからヘルパー(メイド)さんを雇っています。主に家事の部分をお願いしていて、育児は自分たちでと役割の分担をしています。
特:やはりヘルパー(メイド)さんの存在は大きいですね。
M:そうですね。どのようなサポートを得るかどうかは、自分の考え方次第ですよね。つまり、何があなたを幸せにするかという問いに向き合ことです。例えば、専業主婦で子どもいることが幸せにするのならそれを選択すればよいし、料理や家事が好きでなくやらないでいるほうが幸せであれば、代わりを見つければよいと思います。仕事と家庭を両立するというより、どうすれば、自分が明るく楽しくいられるのか、それを実現するには何が必要かを考えることだと思います。時にそれは、新しいテクノロジーかもしれませんし。いつもどうしたらより幸せな生活を送れるか、ポジティブに考えています。
特:自分の人生をポジティブにデザインすること。大切ですね。
M:そうですね。社会的概念にはあまりとらわれる必要はありません。例えば、母乳神話、自然分娩神話など。社会的に「母親はこうあるべき」という概念がありますが、それが本当に自分のライフを豊かにするのかどうかはわかりませんよね。
ワーママの教育方針
特:これまで、ずっと仕事の最前線で働かれてきています。お子さんとの時間はどのように作っていたのですか?
M:先ほど、少しふれましたがヘルパーさんには家事をお願いしています。つまり、ご飯を作る時間が必要ないので、その時間を子どもと過ごすようにしてきました。確かに、料理を作り食べるということは、親子のコミュニケーションになるでしょう。私は、週末を利用して一緒に巻き寿司を作ったりと、時間を作っていました。
特:忙しい中にも、お子さんとの時間を質的に高めていたんですね。お子さんがまだ小さいとき、保育園はどのような基準で探されたのですか?
M:当時は、今ほど保育園の費用も高くなかったので、あまり多くの選択肢はなかったかもしれません。両親が多くの時間、面倒みてくれていたので、両親の家から近いということが主な選択基準でした。日本のように入園のための前の日からならんだりしませんよ(笑)。
特:物理的な距離が大切だった。
M:そうですね。ところで、実は娘たちの保育園を毎年変えていたんです。特に、保育園に問題があって変えていたのではなく、新しい環境にすることで娘たちの社会性や適応力を高めたいと思ってのことです。小学校に進めばもう転校は可能性がほぼありません。小さいうちから、しっかりと主体性を持てるようにしたかったのです。
特:それはとても個性的な教育方針ですね!私は子ども環境を変えるのにいつもビクビクです…。
M:環境が変わればそれに適応するよう子どもは努めます。自分で状況をよくしようと頑張ります。そうすることで、自然と誰とでも話せるようになっていくと思います。そして、今上の娘は保育士を目指しているのですよ。
特:それは素敵なお話ですね。
M:きっと、保育園時代が楽しかったんでしょうね!
特:他にも教育上の何かポリシーはありますか?
M:娘たちが小学校に上がったときに途上国(ミャンマー)に連れていくことにしていました。シンガポールとは違う環境で育つ子どもたちを見ることで、敏感になって学ぶことは多いと思っています。自分たちの育ってきた環境がいかに安全で平和であるか、親子一緒にいる時間が貴重かを知る機会になるとも思ったのです。なお、このミャンマーの小学校を支援する活動は今も続けています。
特:それは素敵な活動ですね!
M:もちろん、料理の仕方など家事についても教えることもありましたよ!でも、教えたことを実行するチャンスがないと、ものにならないので、例えば料理を作ってもらうようにお願いしたりしました。私も楽ですしね!!
特:私の娘も早く大きくなってそうなってほしい!
M:かつてアジアの女性に「キャリア」は必要ないような見られ方をしてきた歴史があります。今は時代が変わりつつあります。娘たちにもキャリアを大切にすることを示していきたいとも思っています。
最後に
特:最後に、ご夫婦のポリシーのようなものがあれば教えてください。
M:月に1度は2人で出かけるようにしています。実は、私の両親からも勧められたのですが、できるだけ2人の時間を大切にしようと思っています。
特:最近は10分も会話がもたない私たち夫婦、耳が痛い…。
M:それから、週末はなるべく夫婦のプライベートな用事を入れないようにという約束をしています。できるだけ、家族で過ごす時間を大切にしたいと思っているので。もし入れるとしても、2週に1度の夕方だけにするようにしたり、家族を優先するようしています。
特:そうなんですね。私はもう自分の時間、自分の時間で、週末になると目がぎらぎらしてます。
M:(笑)妻として「幸せ」であれば家庭も「幸せ」になると思います。夫婦もそれぞれの夫婦で異なると思いますのでそれぞれのルールで「幸せ」な時間を過ごされるのがいいと思います。私たちはどこかに出かけたりというよりは、うちでまったりするのが好きなのでそうした時間を作るようにしています。
特:素敵なお話です。ずっとお話を伺っているとMelindaさんのお母さまのお考えが随所に。とても先進的に思いますが。
M:そうかもしれません。母の世代では珍しいですね。母はとても子ども好きですので、孫を育てるのはとてもよい刺激になっていたようです。
特:では、Melindaさんの娘さんがお子さん持つことがあれば、孫育てですね!
M:それはどうかわかりませんね(笑)
特:前回のインタビューでは、旦那さんが家族のために転職した話を聞きました。シンガポールの男性は家族に対して真摯に向き合っている気がします。
M:日本人の男性は保守的な感じがしますね。でもそうした功績(仕事に熱心なこと)が日本の経済における影響力の源でもあったと思います。他にも、丁寧で親切ですよね。いい面もたくさんあります。シンガポールの旦那さんは柔軟ですが、日本のそうした良さはありませんね。
特:なるほど!さすが。ポジティブな面を見落としがちですね。
M:そうですよ!なんでもポジティブに!それが、私の元気の源ですから。
常にエネルギッシュに、そして楽しそうに自身の考えを話してくれたMelindaさん。思春期のお子さんがいるとは思えないほどキラキラ輝いていました。話を聞いてる私たちもワクワクしながら拝聴しました。これまでの経験から得た自信が、ゆるぎない自らの「芯」となり、今のMelindaさんを形成していることを強く感じました。
明るくポジティブに見えるMelindaさんですが、経済成長を遂げるシンガポールできっと大変な競争もあったでしょう。ワーママとの両立は決して楽ではなかったと思います。
でも、その時代で、置かれた環境で、母として、妻として様々な経験をしつつも、常に明るく前向きに「WHAT COULD MAKE LIFE HAPPIER」を追求しつづけた。
だからこそ、自らの「芯」を持て、周りを元気にさせるパワーを持てるようになっているのではと、話を聞きながら思いました。私も、この根源的な問いに向き合っていき、芯を見つけたいものです。
経験こそ、最大の宝。本当に。同じアジアの女性として尊敬です。わたしも少しでもポジティブシンキングできるように、語尾につねに「まいっか」をつけていきたいと思います。そういうことではないですかね。あれ。どうやるんだポジティブシンキング?!
Cooperated by:
Melinda Ng, Makiko Ono
Supported and Advised by:
Madoka Nakano
Reported by:
Aiko Mochizuki