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新型コロナウイルス感染拡大中のメンタルヘルス対策(2) & シンガポールのCOVID-19対策レポート

緊急企画、「コロナ」からくるメンタルダウン対処法第二弾。前回にひき続きシンガポールのはたママ医師にお話を伺ってきました。今回アドバイス頂いたのは、日系クリニックで家庭医として勤務されている目原久美先生です。医療現場から見るシンガポールでのCOVID-19対策についてもコメント頂きました。

**目原久美先生には、コロナウイルスのメンタル対策とは別途、「専門家に聞くメンタルヘルス対策」でもインタビューさせて頂いています。どうぞこちらもあわせてご覧ください。

シンガポールにおけるコロナウイルス対策について

―シンガポールにおけるCOVID-19対策についてどう捉えていらっしゃいますか?

政治家と専門家が協力し、データや専門知識を生かしながら良く対応していると感じています。シンガポールでは開示されている情報に透明性があり、政府の思考過程も良く分かります。シンガポールでは毎日Multi-Ministry Task Force (MTF)が進展について情報を開示し、COVID-19に対するガイドラインも日々アップデートされています。私が勤めているクリニックでも現場でどう対処するか迷う前に政府から迅速に指示が飛んでくるため、足並みを揃えて感染防止の一翼を担っているという実感があり、安心して診療を行うことが出来ています。

 

―シンガポールでは4月1日にCOVID-19の感染者数が1,000人に到達し、政府は感染拡大防止のため新たな措置としてサーキットブレーカーという対応をとることを4月3日に発表しました。この対応についてはどう感じていらっしゃいますか?

これまでは感染者やクラスターも追跡・特定が可能な範囲でしたが、最近では感染源不明の国内発症ケースが増加してきました。またCOVID-19は症状の出方に幅があり、感染していても無症候という場合があります。最近になってそうした無症候者からもウイルスが感染するということが分かりました。

政府はこうした状況を受け、これまで行ってきた渡航歴確認と濃厚接触者隔離だけでは対応できないと判断し、一気にウイルスを封じ込めるべく今回の対応に踏み切ったのだと思います。したがって今回の対応はこれまでの対策が間違っていたというよりも、無症候者を含めた感染を封じ込めるために必要な新たな措置だったと感じています。

また今回サーキットブレーカーは1カ月という期間が設定されていますが、これは通常の観察期間の2サイクルという意味合いがあります。行動自粛を行った結果というのはすぐには現れません。行動自粛を開始した1週目、2週目の結果が3週目、4週目に出てくるので、その結果を見て効果判定を行います。サーキットブレーカーが1カ月で終わるかどうかは誰にも分かりませんが、1カ月という期間が何を根拠に決められているのかを理解した上で、まずは決められた期間自宅で過ごすことに集中しましょう。

行動自粛期間中の過ごし方について

―サーキットブレーカー期間中の過ごし方についてアドバイスがあればお願いします。

いつ終わるか分からない、自分でコントロールが効かないという状況はストレスを感じてしまうと思いますが、シンガポールでは最低限の移動が許されているという点で精神衛生は保ちやすい環境かと思います。期間中も他者との濃厚接触を避ける形でエクササイズのため外出することは認められていますので、1日1回散歩や運動を行うと良いのではないでしょうか。

また、急に仕事や学校などのルーティンワークがなくなり、自宅で朝からだらだら過ごしてしまうと生活リズムが乱れて「暇疲れ」「隔離疲れ」になってしまいます。こうした事態を防ぐためのアドバイスとして、自宅にいても、”何時から仕事をして、休み時間はここにする、運動もきまった時間に1日1回入れるようにするなどのタイムテーブルを作る”ことをお勧めします。あまり厳密に作りすぎて実行できずがっかりする必要はないですが、ある程度効率よくできそうなやり方を決めると良いですね。

 

―子供たちもオンライン授業やチャイルドケアが休園になりますが、過ごし方についてアドバイスはありますか?

学校から出される課題に取り組む際にも、やはりタイムテーブルを作っておくと良いかと思います。年齢が上のお子さんであれば親が一方的に押し付けるのではなく、一緒に時間割を作成し、本人が好きな時間割にして、勉強だけでなく運動や楽しめる時間を入れてはどうでしょうか。

また子供にとって友達とのネットワークはやはり大切です。オンラインでの交流で良いので、自分の気持ちを表現する場を確保してあげてください。ただ、ネット漬けになってしまうとやはり子供も疲れてしまいます。パソコンやタブレット端末を使用する時間も時間割に組み込み、使用を制限する必要はあるかと思います。

子供たちはCOVID-19の影響で楽しみにしていたイベントや予定がキャンセルになり、がっかりしているかと思います。私達大人はキャンセルしなければならなかった理由を逐一説明する、実現可能な範囲で次はこうしようねと気をそらす提案をするなど、子供の失望感に向き合う必要があります。ユニセフのWebサイトでは親に向けた心理学者のアドバイスや若者に向けたメンタルヘルスを防ぐためのアドバイスなどが掲載されていますので、参考にしてみてください。

COVID-19に対する心構えについて

―感染症で先が見えない状況のもと、不安感が高まりやすくなっていると感じますが、どのような心構えで過ごせばよいでしょうか?

日本赤十字社がWebサイトで大変参考になるアドバイスをしていましたので紹介します。そこには、COVID-19に3つの”感染症”という顔があると書かれています。1つ目の”感染症”は病気そのもの、2つ目の”感染症”は不安と恐れ、3つ目の感染症は”嫌悪・偏見・差別”です。

1つ目の”感染症”を防ぐためには病気のことを良く知ることが必要ですが、あまり情報を調べすぎると息切れしてしまいますので、今は手洗いの励行、人との距離を取るなど、自分にできる感染予防に努めることが大切だと思います。

2つ目の”不安と心配の感染症”を防ぐためには、まず自分自身が不安を感じているということに気づくことが必要です。そして考えても仕方がないことと、自分に出来ることを整理し、考えても仕方がないことに費やす時間を減らし自分に出来ることに気持ちを向けてください。不安が募って来たときは、自分の足が地面についていること、自分の手の温もりや握りしめている力を感じるなど、自分の身体感覚を取り戻すことも大事です。呼吸が浅くなっているときは、ゆっくり息をして、吸う息より吐く息を長めすることも気分を落ち着けるのに役立ちます。情報は知ることで安心できる人と、更に恐怖心を抱いてしまう人がいます。自分が後者のパターンである場合には、政府や公の機関が発表する質の良い情報に1日1回アクセスするなど決めて、溢れる情報に惑わされないようにしましょう。シンガポール政府がWhatsAppで発信している情報や、英語が苦手な方であれば、大使館からのメールは情報源が確かなのでお勧めです。

3つ目の”差別の感染症”を防ぐためには、私達それぞれが病気を特定の国や地域、集団、人に結び付けないよう注意する意識が必要です。恐怖に直面すると病気と何かを関連付け、自分は違うから大丈夫だと安心したいという気持ちが現れます。そういった考え方は病気ではない人を人種によって差別してしまったり、本来の病気に対する恐れ以上に嫌悪を広めたりしてしまいます。また、自分が感染した時、かえって自分を苦しめることにもつながります。感染はどんなに気を付けていても誰にでも起こりうることで、感染したからといってその人の非を責めるようなものではありません。病気にかかった人を一人の人としていたわる気持ちを持ちましょう。

 

参照ULR

目原先生お勧めのCOVID-19関連Webサイト

COVID-19に対する正しい知識習得

外出先の混雑状況確認

行動自粛期間中の過ごし方

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Profile
目原 久美 (めはら くみ)
在星歴8年。ジャパングリーンクリニック勤務、成人・小児の総合診療担当。救急科専門医。熱帯医学学士。公衆衛生修士。スリランカ、ケニアの紛争地帯で医療活動に従事後、現職。
家族構成:夫、息子(5歳)

Written by Naoko Udagawa
Cooperated by Madoka Nakano and Naomi Tanno

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